そろそろクールビズとやらがスタートする頃だ。
上衣を着ていない人はほっといて、スーツの薀蓄を少し。
キヲツケ!と号令かけられたら、両手の中指はズボンの縫い目に。
学生時代によく言われたものだ。その姿勢で両腕の力を抜くと、縫い目から離れて
ふっと前に動く。ここが腕のホームポジションである。
つまりスーツの袖は前に振るようにカーブが与えられている。
良質なクラシックスーツでは当たり前のことである。
ハンガーに吊るした状態では袖が中身(腕)なしでは固定されず、
自重でねじれることもあるが、手を通せば美しいシルエットを描く。
スーツやジャケット以外でも袖をカーブさせ、その機能を謳った服は多い。
バイクウェアに詳しい方は特に理解できるだろう。
稀に袖付け位置を間違えて左右の袖の振りがずれていたりする。そのありさまを「歩いて
いる」と表現する。
続いて襟、それも上襟に関するはなし。
襟が首筋に吸い付くように美しいラインで作られたものを「のぼり襟」という。
カラー(上襟)に丹念なアイロンワークを駆使して生地を立体化することで可能になる。
この工程は、生地のクセを取る(殺す)ことから、「殺し襟」とも呼ばれている。
少々腕を動かしても襟は首に沿い安定した襟廻りを保つ。
上襟の裏に「ヒゲ」と呼ばれる折り返しがまつり留めされている。
スーツが貴重だった時代に、襟を裏返して使った名残。
殺し襟の工程で生地はかなりの力で伸ばされる。
ヒゲなしでものぼり襟を作る事は出来るが、カラークロス(襟の裏地)を
張った後にヒゲを折り返すので、若干のテンションが働き、上襟のハネを防げる。
あなたのスーツに「ヒゲ」はありますか?
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